1. ミャンマー版・長者番付発表、税金未納付企業リストの公開
(1) 2016年3月度長者番付の発表
2016年12月、税務当局は、法人税および商業税について、各50社の高額納税事業者の発表を行った。それを受け、新聞などでも大々的に報道され、それぞれ企業名、本店所在地、所轄税務署、業種、納税額の概要が記載されている。
法人税の納付企業トップは、カンボーザ銀行(KBZ)(銀行業)。納税額は、200億チャット(約20億円)以上とされている。その他、納税額が100億チャット以上200億チャット未満の企業は3社。Myawaddy Bank(銀行業)、Myanmar Economic Holdings(製造業)、Myawaddy Trading(貿易・販売業)と政府系の企業が並ぶ。ヤンゴン管区だけでなく、シャン州に本店を置く企業2社もランキング入りしているのも興味深い。業種としては、インフラ、資源といった骨太の基幹事業が上位を占める。
商業税の納付企業トップは、Denko Trading(貿易・販売業)。納税額は、200億チャット(約20億円)以上。納税額が100億チャット以上200億チャット未満の企業は5社で、順にDAGON Beverages Company(製造業)、Myawaddy Trading(貿易・販売業)、Shwe Byain Phyu(貿易・販売業)、Asia Energy Trading(貿易・販売業)、Regency Material Trading(貿易・販売業)。商業税は、まだ仕入れ税額控除の運用が実質的に機能していない面があるため、売上税の性格を帯びている。ある程度売り上げ規模の大きな企業を類推することができるが、政府系や銀行その他商業税の免税事業者については、ランキングには登場しない。業種としては、インフラ・資源系、貿易・小売りだけではなく、宝石事業やサービス、メディアといった業種も目立つ。酒の輸入業を手掛ける個人など、ちらほら個人事業主が登場しているのも特筆すべきポイントだ。
ミャンマーにおいては、法人と個人の所得税が同じ所得税法で規定されている。申告書も同じ様式で、法人税の計算において多少の税務調整はあるが、日本の別表方式ほど複雑ではない。
(2) 税金未納付企業の発表
当局は、自動車のショールームの運営や販売を行っている企業につき、2017年1月12日時点において、2014年4月から3年以上税金を納付していない企業70社の実名を公表した。リストには「Japan」や「Sakura」といった言葉が入った日系を思わせる企業名も一部に見受けられる。当局はこれらの企業について速やかに3年分の税金を納付するよう勧告している。このようにメディアに税金未納付企業を公開するということは、かなりの社会的制裁効果が見込まれる。日本においても、時折、脱税案件が大きく報道されることがあるのは周知のところであろう。
2. 今後の動向
2015年、投資企業管理局(DICA:Directorate of Investment and Company Administration)が一斉に現役企業の届け出調査を行い、期日までに届け出のない企業について抹消リストを作成し、公開した件は記憶に新しいところである。抹消企業にそうそうたる大手企業が記載されていて、驚いた向きも多かったと思われるが、実際にはインターネットによる提出・受け付けが機能していなかったという事象もあった。
税務署においても、書類の紛失や管理のずさんさ、付け届けの慣行など、まだまだ混沌(こんとん)とした面も多いが、少しずつ管理体制を構築し、徴税の強化を図っていこうとする意志が感じられる。
新政権への交代後、諸税金の徴収アップはミャンマーにおける優先課題の一つである。当局も近年、大規模納税者向けの大規模納税者税務署(LTO:Large Taxpayer Office)を創設し、また、従来の中規模納税者税務署(MTO:Medium Taxpayer Office)を三つに分割して税務官を大量増員。徴税率のアップに努めている。これまで運用が徹底されていなかった源泉税や商業税、印紙税について、より一層の徴収強化が予想される。
帳簿の保存義務の規定なども曖昧であるため、遡及(そきゅう)して徴税が行われるリスクもゼロではない。しっかりとリスクを捉えて申告納税を行っていく姿勢が大切であろう。