ミャンマー社員旅行事情~バンコク社員旅行記

概要

ミャンマーでは最近、社員旅行を行う会社が増えている。日本では敬遠されることも少なくない社員旅行であるが、ミャンマーの社員たちにとって、福利厚生の一環としての社員旅行は楽しみの一つ。最近では皆で旅行するだけでなく、旅行中に研修を取り入れるなどの試みも登場している。今回は、実際に18人でタイのバンコクへの社員旅行を実施した弊社の事例を紹介したい。

実例:弊社のバンコク社員旅行について

・日程および参加者、1人当たり予算

日程:2018年1月11日(木)~13日(土)

1日目:9:20バンコク着、ホテルチェックイン、昼食、寺院(ワット・アルン)観光、夕方ショー見学、アジアティーク・ザ・リバーフロントにて買い物

2日目:終日サイアム・パーク・シティー(ウオーターパーク)、夕方から超高層ビルのビュッフェ、ナイトマーケット探索

3日目:寺院(ワット・ポー)観光、デパートで買い物、週末マーケット観光および買い物、20:30バンコク発、21:30ヤンゴン着

参加者:日本人所長1人、ミャンマー人スタッフ17人

1人当たり予算:250ドル

時期の選定:ミャンマーにおける社員旅行のハイシーズンは、11~12月。理由は、国内においては気候が最も良い乾季であり、各地の観光地も稼働しているため。今回のバンコク旅行についても、タイの気候の良い季節がミャンマーと似ていることからこの時期とした。また3月からの繁忙期に備え、モチベーションアップとチームビルドを図っておきたいという意図もあった。

・準備期間

– 2017年10月に宿泊および飛行機の予約

– 2018年1月に入ってからオプショナルツアーの予約



今回は、宿泊および航空券は旅行サイトを使って入手。後に、早い時期であれば、ミャンマーの旅行会社のプロモーションなどを使うとかなり安い金額で予約できたことが判明。少なくとも4~5カ月前には準備し、手配を行っておきたい。



また参加者18人中14人が、海外旅行が初めてであったため、パスポートを取得する必要があった。パスポートの取得は申し込み手続きが大変で、朝に申し込んで夜遅くにやっと引き取り券が発行され、しかもその場を動くことができないという状況である。社員は皆、12時間以上並んで大変な思いで取得手続きを行った。パスポートは通常、手続きを行ってから10日以内に発行されるが、先祖に外国人が含まれている社員などは、取得までに2カ月ほど要した。また、農村部出身の社員などはその親が心配し、結局国外への旅行を許してもらえなかった者もいた。



総務担当社員の2人に社員旅行の幹事を命じたが、3人ごとの部屋割りや、オプショナルツアーで行きたい場所など皆のリクエストが多く、取りまとめに大変苦労したようだ。準備段階で、幹事から「準備はしますが、これほど苦労するくらいなら自分自身は旅行に行きたくない」という申し出があったほどだ。しかし、何とかなだめて敢行した。

・旅行中

当日、空港には見送りにくる社員の両親などもいた。チェックインや出国手続きなどは思ったよりスムーズに行えた。搭乗前に、バンコクはミャンマーとは治安状況が違うことや、集合時間を厳守しないといけないということを社員に対して丁寧に説明した。



バンコクでは、貸し切りバスやタクシー以外にBTS(スカイトレイン)、地下鉄、バスなどミャンマーでは体験することのできない公共交通機関による移動を多く取り入れることを意識した。カードやチップを改札口でかざして入場する駅については皆、大きな関心を持っていた。電車は混んでいたが、皆われ先に席に着いて、年長者に席を譲るといった姿勢があまり見られなかった。バンコクの印象については「思ったよりあまりヤンゴンと変わらないイメージ」「ヤンゴンもすぐにこのような街並みになると思う」「ずいぶん昔はミャンマーの方が発展していたのに、今は追い付いて追い越したタイは素晴らしい」といった意見が出た。



食事については、これまでミャンマー国内で何度となく食を共にしてきたメンバーであるものの、実は中華のように取り分けて食べるような食事は苦手で、一人一人完結した定食のようなメニューに、スープやカレーなどシェアできる料理をプラスする方が好きであるという新事実が分かった。皆、甘いタイのカレーはあまり好みではないようだ。年長のマネジャーが「たとえ口に合わなくても、その国に行ったらその国の料理を食べることが大切」と諭し、渋々皆、タイカレーも食した。



オプショナルツアーについては、高層ビルの夜景を楽しむことができるビュッフェやダンスショー、ウオーターパークなどに参加してもらった。三つのオプションを合わせても1人50ドル程度であり(ミャンマーの旅行会社で手配)、宿泊費、航空券およびオプショナルツアーの旅行代金合計については、バガンやインレー、ベイといった高額のミャンマー国内旅行より安い場合もある。



心配していた集合時間であるが、どこかに行くたび、必ず何人かの社員が集合時間に遅れてくる状況であったので、途中から、遅れてきた社員は、皆に向かって謝らせることとした。すると皆、集合時間を守るようになった。ミャンマー人は、皆の前で謝ることを非常に嫌う傾向があるためである。



初日には、タクシーで眠ってしまい携帯電話を紛失した社員がいた。ミャンマーと違って紛失物は二度と出てこない場合が多いことを説明したが、この社員がホテルやタクシー会社などに問い合わせを何度も行うことを求め、非常に手間が掛かった。結局、携帯電話は出てこなかった。



また、とある寺院の前にいたトゥクトゥクの運転手たちにだまされて、寺院が祝日で休みのため、代わりに水上マーケットに行こうと誘導された。この事実が発覚しても、アドミンスタッフのみと情報共有していたため、社員の皆には伝えていなかった。ミャンマーにおいてこのような詐欺まがいの経験や危ない目に遭うといったことはほとんどないので、アドミンスタッフもショックを受けたようであった。



20代前半の若い社員がほとんどのためか、皆の大きな関心は買い物である。親戚や家族へのお土産選びを楽しんでいた。また、ミャンマーでは泳ぐ機会がほとんどないので、水がきれいなウオーターパークで1日を過ごすという企画は大変盛り上がった。



知らない土地でぞろぞろと公共交通機関に乗り、移動して皆で体験したことのないことを行うという経験は、チームビルドにおいて非常に高い効果があったと思う。また、経済発展著しいバンコクを実際に訪れることにより、社員たちはヤンゴンの将来の姿をイメージすることができたようだ。



最終日、ヤンゴン空港に午後9時過ぎに到着すると、ほとんどの社員の家族が空港到着口に迎えに来ていた。無事を祝って、皆で記念撮影を行った。

・旅行を終えて

1日休みをおいて、休み明けのミーティングでも皆、社員旅行の余韻が残っており、チームビルドの効果を実感できた。また、次回の社員旅行を楽しみに頑張っていくというインセンティブの効果もあった。



旅行中は、社員同士の人間関係や性格を観察するのに絶好の機会だった。意外なメンバー同士が行動を共にしていたり、利他的に動くのは誰かなど、非常に興味深かった。ミャンマーにおいては、組織の構成が二者関係の集合という面があり、マネジメントを行う上で、社員同士の人間関係の観察は極めて大切である。

・旅行にかかった費用

飛行機および宿泊代:2,500ドル

食事代(1日目朝食・昼食・夕食、3日目朝食・夕食):750ドル

現地交通費:500ドル

オプショナルツアー代:900ドル

その他:100ドル



合計:約4,750ドル

1人当たり:263ドル

社員旅行の人気の行き先、相場やトレンド

1. 行き先

人材関連会社Japan SAT Consulting(J-SAT)が2017年2月に実施したアンケート調査によると、日系企業41社において人気の行き先は(1)グウェサン:5社、(2)バガン:3社(3)チャウンダー:2社となっている。



M0099-0003-1

資料提供:J-SAT

同社2017年2月実施アンケート(日系企業41社)

同社は、ミャンマーにおける日系企業について定期的にアンケート収集を行っている。

2. その他人気の社員旅行の行き先および相場

その他、弊社クライアント、社員への聞き取りによる社員旅行の人気の行き先(ミャンマー国内)および1人当たりの旅行予算は、下記の通りである。

人気の行き先・予算

グウェサン:1人当たり100ドル程度

バゴー・チャイティオー:1人当たり50~150ドル程度

モウラミャイン:1人当たり50~150ドル程度

バガン:1人当たり150~350ドル程度

インレー湖:1人当たり150~350ドル程度

3. ミャンマー社員旅行のトレンド

社員旅行の機会を使って研修を行うといったプランも人気

せっかく社員総出で移動宿泊するというイベントを利用して、研修を行うといった企業も登場。人材関連企業のフォーバルミャンマーでは、在ミャンマー企業を対象に社員旅行向けの研修プランを提供し、好評を博しているとのこと。30~数百人規模まで、ゲームなどを使ったチームビルドやコミュニケーション能力向上の研修が人気で、1,500~5,000ドルで依頼可能。

まとめ

日本では、現在はあまり人気のない社員旅行であるが、ミャンマーで働く会社員にとっては、楽しみな福利厚生の施策の一つである。外国への渡航や高額な国内の旅は、社員たちに対する高いインセンティブとなり得る。また、集団で移動宿泊するという絶好の機会を使ってチームビルドの研修などを行うことも、ミャンマーにおけるマネジメントにおいて有用であるといえよう。

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