個人事業主から法人化するメリット・デメリットを紹介
個人事業主の中には「いつか法人成りしようと考えている」という方もいるのではないでしょうか。
法人と個人事業主にはそれぞれ異なる良さがありますので、両者の特徴をよく理解した上で法人化の決断をすることが大事です。
当記事では法人化によるメリット、そしてデメリットをまとめていますので、将来的に法人化を視野に入れている方はぜひ参考にしてください。
個人事業主から法人化するメリット
事業主体が個人から法人になることで得られるメリットとしては、次のような事柄が挙げられます。
●税率が一定であることによる節税効果が得られる
●所得が分散できることによる節税効果が得られる
●費用計上の幅が広がることによる節税効果が得られる
●事業規模を大きくしやすくなる
●取引先・消費者からの信頼が得やすくなる
ただし法人化をすれば必ず得られるメリットということではありませんので注意しましょう。
税率が一定であることによる節税効果
事業で生じた売上から経費等を差し引いて所得が算出されます。個人事業主の場合はこの所得に対して「所得税」が課税されるところ、所得税では累進課税制度が採用されていて、所得の金額が大きくなるほど適用される税率も大きくなります。
最大45%もの税率が適用されてしまうため、個人事業主として大きな利益が出ていると割合大きな税負担を負うことになってしまうのです。
これに対して法人には「法人税」が課税されます。法人税でも法人の種別・資本金の額によって税率の違いはあるものの、基本的には一定です。
最大でも23.20%であり、大きな利益を出しているときでも同じ税率が適用されます。
そこで利益がある程度大きくなってくると、法人化により節税効果が得られることになります。
所得が分散できることによる節税効果
個人事業主だと、事業から生じた所得がまるまる個人の懐に入ることとなり、まるまる所得税の課税対象となります。
しかし法人の場合は代表者1人しかいない場合でも、事業主体である法人とその経営者である個人は区別して考えます。
経営者は所得のすべてを手に入れるわけではなく、定めた役員報酬を受け取ることになり、法人のお金と経営者のお金に分散されます。
所得の分散が常に節税効果を生むわけではないものの、税金の計算を考慮した上で役員報酬を設定すれば全体として節税効果が得られることもあります。
個人事業主の場合はこうした工夫ができないため、所得の分散を法人化によるメリットと捉えることができるでしょう。
費用計上の幅が広がることによる節税効果
事業のために支出したお金は経費として計上し、その分課税対象となる所得を小さくすることができます。
そして経費計上ができる範囲は法人の方が広く、例えば退職金や生命保険料であるなど、個人事業主だと経費にできなかった支出も経費に含められるようになります。
この仕組みを上手く活用すれば節税効果を高めることも可能です。
事業規模を大きくしやすくなる
個人事業主は経営者が1人です。
従業員を雇うことはできますが、基本的には小規模での運営に向いた事業主体です。
一方の法人は組織としての事業運営に適しています。
複数の経営者を置き、チームで経営判断を下すことができるようになります。
また、従業員も集めやすく、事業を大きくしたいときには法人化したほうが良いと考えられます。
取引先・消費者からの信頼が得やすくなる
ビジネスにおいて信頼は非常に大事な要素です。
個人の名が売れている場合は個人事業主であっても信頼を得やすいですが、一般的には法人である方が取引先・消費者から信頼が得やすいです。
一概に大きな差があるとはいえませんが、取引金額の大きな契約を締結する場面や大きな資金調達をしたい場面などでは、法人である方が比較的話を進めやすいです。
個人事業主から法人化するデメリット
個人事業主から法人になることでデメリットも生じます。
●法人として事業を開始するまでの手続が多い
●事務作業にかかる手間と費用が大きい
●計画通りの利益が出ないと税負担が大きくなる
●利益がなくても税負担はかかる
デメリットの大きさとメリットの大きさのバランスは個々に異なります。
各々自身の状況を踏まえて法人化すべきかどうかの評価をする必要があるでしょう。
特に税制上の取り扱いが大きく変化しますし、税金の計算、お金の流れについて不明点があるときは税理士を頼りに解決を目指すと良いでしょう。
法人として事業を開始するまでの手続が多い
法人化する場合、まずは会社設立の手続を進めなくてはなりません。
株式会社の場合、1人で設立するなら「発起設立」、外部から出資を受けるなら「募集設立」の2つの方法があります。
前者の方が手続は簡素ですが、それでも定款の作成や公証人による認証、株式の発行、出資の履行、登記申請などしなければならないことは多岐にわたります。
個人事業主だと開業届の提出だけで足りたものが、法人だと大幅に手続が増えるのです。
また、事業主体が自然人から法人へと変わるため、形式的には別人格が事業を行うことになります。
許認可の必要な事業である場合、再度許認可の手続を進めなければ事業を開始できません。
さらに取引先との関係を継続する場合、当事者が変わることに基づき契約関係でも引き継ぎの手間がかかります。
こうした様々な手続を済ませた上で、本格的に事業を再開できるようになります。
事務作業にかかる手間と費用が大きい
事業開始時点のみならず、その後の運営にも比較的大きな負担がかかります。
例えば株式会社の場合定時株主総会を開催することになりますし、その株主総会を受けて貸借対照表等の公告が必要となります。
官報公告を行う場合は費用も発生します。
公告は毎年必要な法律上の義務ですし、株主総会の開催自体にも手間がかかります。
議事録も備え置かないといけませんし、一定期間おきに経営者である取締役の任期もやってきます。
再度選任するかどうか、新たな取締役を就任させるかどうかの判断や手続が必要となります。
特定の事項につき変更があったときは登記申請も必要です。
また、社会保険も強制的に適用されますので、このことに伴い手間も費用も発生します。
計画通りの利益が出ないと税負担が大きくなる
利益が大きな場合は法人の方が税金の面で有利であることを説明しましたが、もし想定通りに利益を出すことができなければ、かえって税負担が大きくなってしまうおそれがあります。
常に法人税の方が有利ではないことに留意し、一定以上の規模で利益が出る見込みがないのであれば、法人化によるリスクが大きくなります。
利益がなくても税負担はかかる
利益が小さな場合は法人の方が税負担は大きくなります。そして利益がなく、赤字である場合でも法人には税負担があります。
個人事業主だと赤字の場合は所得税が0円となり、住民税も非課税となります。
しかし法人には少なくとも一定額の税負担がかかる仕組みになっていますので、利益がマイナスであるにも関わらず税金は納めないといけません。
法人化のデメリットよりメリットが大きくなるケース
「法人の方が個人事業主より常に有利」と判断することはできません。
ただし以下の場合には法人化のデメリットよりメリットの方が大きくなる傾向にあります。
●1,000万円を超える所得がある
●事業規模を拡大する計画がある
●出資による資金調達をしたい
●リスクを分散したい
●複数人で経営したい
ご自身でメリット・デメリットのバランスを考えることも重要ですが、会社設立、税務、資金調達などに精通した専門家に相談して意見を聞くことでより的確な判断が下せるようになります。
投稿日:2023/10/17
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