税務会計と財務会計の比較|計上のルールや最終的に目指すところの違いとは

税務会計と財務会計は、いずれも企業の経済活動を数値化し、これを記録・計算・報告するための処理をいいます。それぞれに目的や根拠となる法令・基準、計算方法などに違いがありますので、経営者の方や経理業務・税務に対応する方はこの2つの用語について理解を持っておきましょう。

当記事でも両者を比較しながら整理しています。

税務会計の特徴

税務会計の特徴を、目的や計上のルール、最終的な実務から説明していきます。

「納税額の計算」を目的とする

税務会計の主な目的は、「正しい納税額を算出すること」にあります。企業も社会を構成する一員であり、公平に税負担を負うために税務会計は欠かせません。

計上の仕方は税法に基づく

税務会計における計上は、税法に基づいて行われます。

 

税制において重視されるのは公平性であり、適切に税負担が課されなければいけません。

法人税法や所得税法、消費税法などの法律を一律に適用することで、その実現を図っています。

最終的には税務署に申告書を提出する

税務会計に基づく結果は、最終的に税務申告書という形でまとめられます。

 

例えば法人税申告書、消費税申告書などに適切な金額を記載し、これを税務署に提出することになります。

一定の期間内にこの申告を済ませ、期日までに税金を納めなければなりません。

 

税金の納付が遅れてしまったり金額が誤っていたりするとペナルティを受けることになるため、注意が必要です。

加算税や延滞税が発生し、元々納めないといけなかった金額に上乗せされてしまいます。

財務会計の特徴

財務会計の特徴を、目的や計上のルール、最終的な実務から説明していきます。

「財政状態や業績の報告」を目的とする

財務会計の目的は、「企業の財政状態や業績についての情報を、株主や債権者などの利害関係者に示すこと」にあります。

 

こういった情報を提供することで、例えば投資をする際の判断材料として使うことができますし、金融機関が融資にあたってのリスクを評価する資料としても使えます。

 

企業の情報がオープンになることで市場における公正な競争が促進され、投資家保護にもつながるのです。

計上の仕方は会計基準に基づく

財務会計においては、税法ではなく会計基準に基づいて計上が行われます。

 

会計基準とは、事業活動によるお金の動きや資産の保有などについてわかりやすく整理して外部に示すためのルールのことです。
税法も会計基準も、どちらも企業の経済活動を数値で表すためのルールですが、会計基準では上記の通り「財政状態や経営成績を適切に表す」という視点で企業の経済活動を捉えます。

 

その違いは資産の評価方法、費用・損失の範囲などに現れますので、決算時にはそのずれを調整する作業が発生します。

最終的には株主などに財務諸表を公開する

財務会計においては、財務諸表(主に貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)の作成が特に重要です。

 

    • 貸借対照表・・・決算時点における企業の財産状態を示す書類
    • 損益計算書・・・1年間での企業の収益や費用など、経営成績を示す書類
    • キャッシュフロー計算書・・・現金等が一定期間でどのように増減したのかを示す書類

正確な財務情報を公開することが企業と投資家、外部機関との間での信頼関係の構築に寄与しますし、市場における適切な評価にもつながります。

税務会計と財務会計の違いを比較

税務会計と財務会計の違いを簡単に比較すると、下表のようにまとめられます。

 

税務会計 財務会計

目的

企業の課税所得を計算して納税額を確定させること 企業の財政状態や経営成績を明らかにして報告すること

計上の仕方

法人税法や所得税法、消費税法などの税法を根拠に計上する 企業会計原則や会計基準、その他会社法や金融商品取引法などの法令や基準を根拠に計上する

結果の報告

確定申告書などにまとめて税務署に提出する 株主などの利害関係者に対し、財務諸表(貸借対照表・損益計算書等)を開示する

 

実務において両者の違いを意識することになるのは、決算・申告業務に対応する場面です。財務諸表や税務申告書を作成するときには両者の違いを把握して適切な調整を行う必要があります。この業務については税理士に相談・依頼することもできますので、対応に困ったときは専門家の利用も検討すると良いでしょう。

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