弁護士費用は経費になりますか?

今回は、個人事業主や会社が弁護士費用を払った場合の取り扱いについていくつかの事例ごとにご説明します。

 

 

1. 業務に関係ない弁護士費用
個人の方にしか発生しませんが離婚に関する弁護士費用や、税務調査の結果が不服として国を相手取って行う所得税に関する訴訟の費用が該当します。
個人の方がこれらの費用を支払った場合は、特に何かの税金計算上差し引くことができることもなく、そこで終了になります。

一方、会社(法人)の場合は、例えば法人税の課税に関して訴訟を起こした場合の弁護士費用も税務上の経費(損金)になります。

 

 

2. 資産を取得するためにかかる弁護士費用
例えば所有者について争いのある不動産の所有権を確保するために必要となった訴訟費用や、会社の株式を買うときに会社の調査を行うために支払った費用(いわゆるデューデリジェンス費用)が該当します。
これらの費用を支払った場合は、個人でも会社でも、その不動産あるいは株式等の金額に含めることになります。
その不動産などを売却したときの収入から購入代金等と一緒に差し引いて税金(譲渡所得の所得税、法人税等)を計算することになります。
ちなみに、遺産分割協議の費用は相続人同士の紛争解決費用であるため該当しないとされます。

 

 

3. 業務に関する民事訴訟の費用
民事訴訟費用というと例えば、個人事業主の方が営業の掛代金を取り立てるための裁判や、業務に関連して交通事故を起こした場合の損害賠償金に関する裁判等が該当します。
個人の方が支払ったこれら民事訴訟の費用で業務に関するものは、基本的にはその業務に関する所得の計算で差し引くことになります。
業務に関係ない民事訴訟(たまたま不動産を売ったら買手の人がお金を払ってくれないときの訴訟など)の弁護士費用は、残念ながら税金計算上は考慮されません。
ただしこの取扱いは、損害賠償金に関する裁判の場合には、事業主に故意又は重大な過失が無いとされたものに限り経費に出来ます。
仮に故意・重大な過失ありとされてしまうと損害賠償金だけでなく弁護士費用も経費になりません。

 

なお、会社の場合は損害賠償金に個別的な取扱いもありますが、弁護士費用については特別な扱いなく損金になります。

 

 

4. 業務に関する刑事訴訟の費用
刑事訴訟は大変です。
刑法や刑事罰が設けられた法令に違反した場合の裁判で、業務に関連しそうなところだと対人で交通事故を起こしてしまった場合などが該当するでしょうか。
業務に関連するものでも、個人事業主の方が経費にするのはハードルが高いです。
次のいずれかに該当する場合のみ、経費に出来ます。
(1) その違反がないものとされた場合(違反に対する処分を受けないこととなった場合)
(2) 無罪の判決が確定した場合

 

なお会社の場合は、費用として確定していれば上記(1)(2)に該当しなくても弁護士費用は損金になります。

 

 

このように、弁護士費用一つ取り上げてもどのような背景がある支出かによって税務上の取扱いはかなり異なります。
ここまで解説してきましたが、弁護士費用そのものについて体系的に整理した法令・通達は無く、ここまででも弁護士との契約により色々な場合が想定できる「顧問料」や「事業主や会社が役員・従業員の弁護士費用を代わりに支払った場合」、「地面師により第三者に転売された土地の名義回復費用」
など特殊過ぎる事例は取り上げていません。
どれに該当するかわからない場合やいずれにも該当しない場合は、お近くの税務署または税理士事務所にご相談ください。

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