働きながら年金を受け取れない?老後資金のジレンマ!

インフレが進行している中、老後資金問題はますます厳しくなっています。

総務省統計局の2022年「家計調査年報(家計収支編)」を参考に、消費支出に非消費支出(税金・社会保険料)を加えた毎月かかる生活費の合計額は「65歳以上の夫婦のみの無職世帯26万8,508円、単身の無職世帯15万5,495円」となっています
(参照:家計調査報告〈家計収支編〉2022年〈令和4年〉平均結果の概要 p.19丨総務省統計局)。
さらに夫婦が年金以外に用意しておくべき、老後資金の目安は1,364万円以上と言われています(参照:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」)。

それに対して、厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」 による老齢基礎年金(国民年金)の平均受給額は5万6316円、老齢厚生年金の平均受給額は14万3973円です
(参照:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 p.26、27丨厚生労働省年金局)。

その背景で余裕がある生活を過ごすため、定年後年金をもらいながら、働く方も少なくありません。
働きながらでも年金は受給できますが、一定の状況で年金は部分支給されるもしくは支給停止されることになる。この年金調整の制度は「在職老齢年金」と呼ばれます。
今回は「在職老齢年金」についてお話しましょう。

 

1. 年金の壁
老齢厚生年金と給与の合計が一定基準を超えた場合、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。この基準額は「支給停止調整額」と呼ばれます。
「支給停止調整額」は毎年見直しが行われますため、令和6年の額は前年の48万円から50万円に変更されました。
この50万円は年金の「50万円の壁」と呼ばれます。年金を全額受給したい場合、「50万円の壁」越えることはできません。

 

2. 在職老齢年金の計算方法
1) 在職老齢年金の計算フロー
まず、基本月額と総報酬月額相当額との合計を決算します。
合計は50万円以下の場合、年金は全額支給されます。
合計は50万円を超える場合在職老齢年金による調整後の年金支給月額を計算します。
2) 基本月額と総報酬月額相当額
基本月額=老齢厚生年金(加給年金額を除く部分)の年額÷12
総報酬月額相当額=その月の月給(標準報酬月額) + 直近1年間の賞与(標準賞与額) ÷12
3) 在職老齢年金による調整後の年金支給月額
在職老齢年金による調整後の年金支給月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2
なお、在職老齢年金による調整後の年金支給月額はマイナスになる場合、老齢厚生年金の支給は停止されます。

4) 老齢基礎年金および経過的加算額
在職老齢年金による調整は老齢基礎年金および経過的加算額に影響しないため、老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります。

 

3. 在職老齢年金のメリット
在職老齢年金制度は収入に制限を設ける一方、一定のメリットも存在します。それは厚生年金保険への加入を続けることで年金が増えることであります。
厚生年金保険に加入した期間は、在職定時改定・退職改定により年金額の計算の基礎となる被保険者期間に追加され、受け取る年金額が増えます。
まだ労働できる期間で厚生年金保険に加入し続け、労働し辛い年になったら、支給される年金が多くなるため、生活の余裕を確保可能性が高まります。

 

4. 終わりに
「在職老齢年金」制度の存在するため、「50万円の壁」を超えたら、元々支給されるべき年金を受取できなくなる一方、定年後厚生年金保険に加入すると、
在職定時改定・退職改定により、その後受け取る年金額が増えることができます。
こんな制度を配慮し、老後のライフプランを考えましょう。

 

日本年金機構, (2024), 在職老齢年金の計算方法, https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html, (参照2024.12.226)

日本年金機構, (2024), 働きながら年金を受給する方へ, https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/zairou.html?gad_source=1, (参照2024.12.226)

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