起業資金を賢く調達する新規開業・スタートアップ支援資金の活用方法について

日本政策金融公庫が運営する新規開業・スタートアップ支援資金は、実績のない創業者でも無担保・無保証人で最大7200万円まで借入可能な融資制度です。制度についてよく理解することで、創業者最初の壁となる「起業時の資金調達」を乗り越えやすくなるでしょう。具体的にどのような仕組みになっているのかをここで取り上げます。

 

新規開業・スタートアップ支援資金の概要

同制度は、日本政策金融公庫が運営する創業者向け融資制度です。2024年4月に従来の「新創業融資制度」から移行し、融資限度額の拡充や要件の一部緩和などの面で、比較的利用しやすい制度へと生まれ変わりました。

 

同制度最大の特徴は、原則として担保や保証人が不要であることです。

※あらゆるケースで無担保・無保証が確約されているわけではなく、審査内容や事業・個人の状況によっても異なることには注意が必要。

 

民間金融機関では創業間もない企業への融資は厳しく、多額の担保を求められることがほとんどですが、この制度であれば担保等の負担なく、事業計画の内容と実現可能性を重視して審査を進めてもらえます。そのため実績がなくても将来性のある事業であれば融資を受けるチャンスが広がるでしょう。

 

利用対象者

利用対象は「新たに事業を始める方」または「事業開始後おおむね7年以内の方」です。

 

ただし、適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められることが前提条件となります。

 

融資条件

限度額は7200万円(うち運転資金4800万円)で、返済期間については設備資金用途なら最大で20年間、運転資金用途なら最大で10年間です。

 

資金使途 返済期間
設備資金

(店舗改装や機械購入など)

20年以内
運転資金

(仕入や人件費など)

10年以内

 

また、最大5年間の据置期間を設定できますので、当該期間中は元金返済が猶予され利息のみの支払いとなります。事業が軌道に乗るまでの資金繰りに一定の余裕を持たせられます。

 

これは民間金融機関の融資と比べて緩やかな条件設定ですので、大きな利点といえるでしょう。

 

優遇措置を活用した金利削減が可能

基本となる金利は「基準利率」です。

※参考:https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html

 

しかし、創業者には「創業支援貸付利率特例制度」の適用により基準利率から0.65%引き下げられる場合があります。

※事業をこれから立ち上げる、または事業開始から2期を終えていない場合に適用可能。特例の詳細は下記URLで確認可能。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/sogyo_tokurei_m.html

 

もし以下の特定の条件を満たす方であれば、さらに有利な利率で借入を行うことが可能になります。

 

  • 女性の創業者
  • 35歳未満の若者
  • 55歳以上のシニア層
  • Uターンによる地方創業者
  • 認定創業支援等事業のセミナー受講者
  • ベンチャーキャピタルから出資を受けている方
  • 革新的な技術やノウハウを持つ方
  • 廃業歴があり再チャレンジする方

 

併用できる「資本性ローン」の活用

新規開業・スタートアップ支援資金と併せて検討したいのが、資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)です。

 

資本性ローンの最大の特徴は「返済が最終回の一括払いになる」ことです。融資期間中は利息のみの支払いで済むため、創業期の厳しい資金繰り負担にも一定の余裕をもたらします。

 

また、業績に応じた金利設定ができる点でも創業者の返済負担に配慮された仕組みといえます。

 

さらに重要な点として、会計上は自己資本とみなされる(財務諸表は借入金だが、金融機関などによる財務評価算定上は自己資本性資金として扱われる)ため、財務体質の改善につながります。その結果、ほかの金融機関からの追加融資が受けやすくなるという副次的なメリットも得られるのです。

 

株式による資金調達と異なり経営権の希釈も起こらないため、創業者が経営の主導権を維持したまま資金調達できるのも大きな魅力といえるでしょう。

 

ただし、資本性ローンを利用するには「地域経済の活性化につながる事業であること」など独自の追加要件を満たさなくてはなりません。専門家にも相談しながら検討を進めましょう。

 

申請を成功させるための準備方法

新規開業・スタートアップ支援資金は実績が十分ではない創業者でも利用しやすい制度ですが、簡単に申請が通るわけではありません。以下の要点を押さえながら準備を進めましょう。

 

  • 説得力のある事業計画書を作成する
    • ビジネスモデルの説明だけでなく、市場分析、競合分析、売上予測、資金計画など、事業の実現可能性を多角的に示す必要がある
    • 特に創業期は実績がないため、計画の具体性と実現可能性が厳しくチェックされる
  • 余裕あるスケジュールで着手する
    • 通常、審査期間に1ヶ月程度要するため、資金が必要になるタイミングを見極めて余裕を持った申請スケジュールを組むべき
    • 希望通りの金額が融資されない可能性も考慮し、複数の資金調達手段を検討することも大切
  • 無理のない返済計画の策定
    • あくまで融資であるため返済義務を負う
    • 据置期間を活用しながら、事業が軌道に乗るまでの資金繰りを慎重にシミュレーションすべき

 

申請準備への対応に不安がある場合は創業融資のサポート実績がある税理士も活用することをおすすめします。条件に合った優遇措置を活用することができれば、同制度により、事業の成功確率を高めることができるでしょう。

高い融資獲得率と豊富な実績がございます。お気軽にお問い合わせください。