「防衛特別法人税の基本構造を理解しよう」~法人税法・地方法人税法との比較で見る制度設計~

2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される「防衛特別法人税」。この新しい税制について、その基本構造をご紹介します。

 

1、おさらい
法人に対する税金の種類についてまずざっとはおさらいしていきましょう。
切り口として、「国税」と「地方税」に分けて見ていきます。
(1)国税(国に納める税金です)
イ 法人税:法人の儲けに対する税金です。
ロ 地方法人税:地方と名前がついていますが国税の一種です。法人税の上乗せとして法人税額に対して課税される税金です。

 

(2)地方税(事務所所在の地方公共団体に納める税金です)
イ 事業税所得割:法人の儲けに対する税金です。法人税の地方版のイメージです。
ロ 特別法人事業税:事業税の一種です。事業税の上乗せとして事業税額に対して課税される税金です。
ハ 都道県民税:通常法人住民税と言われます。法人税割と均等割の2種類が存在します。
法人税割は(1)イの法人税額に対して課税される税金です。
均等割りは法人の儲けに関わらず法人の規模等に応じて一律で課税される税金です。

法人税と一言で言っても実はかなり複雑に税目が分かれていることがご理解いただけるかと思います。

 

(3)その他
その他法人の「儲け」とは別の観点から消費税・事業所税・償却資産税などが存在しています。

 

2、防衛特別法人税概要
令和7年度税制改正により、防衛特別法人税が導入されました。課税制度の仕組みは地方法人税と概ね同様の制度になっており、法人税額に上乗せされます。
申告様式が国税庁のウェブサイトで公表されておりますのでご参考ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_2.pdf

 

3、納税義務者
誰が納めるのでしょうか?納税義務者は「各事業年度の所得に対する法人税を課される法人」と規定されております。
平たく言えば、原則として法人税を申告する全ての法人が納税義務者になります。

 

4、法人税の課税標準と税率
法人税の課税標準は各事業年度の所得の金額です。所得とは、損益計算書の利益に対し一定の税務調整を加えて計算した金額です。
法人税の税率は23.2%です。なお資本金が1億円以下一定の法人については、所得800万円以下の部分については税率15%となっております※1。
※1:適用除外事業者・通算法人にあっては19%。それ以外の法人の所得が10億円を超えた年は17%。

 

5、地方法人税の課税標準と税率
地方法人税の課税標準は各事業年度の「基準法人税額」です。「基準法人税額」とは、所得税額控除や外国税額控除の適用前の法人税額を指します。
少しややこしいですが、まずは法人税に対して課されるものだと思ってもらえれば大丈夫です。地方法人税の税率は10.3%です。

 

6、防衛特別法人税の課税標準と税率
防衛特別法人税の課税標準は各事年度の「基準法人税額」から基礎控除額500万円を控除した「課税標準法人税額」です。
これも同様にややこしいですが、法人税から500万円控除した残額に対して課されるものだとご理解いただければOKです。防衛特別法人税の税率は4%です。

 

7、基礎控除
前述の通り、防衛特別法人税には基礎控除500万円が設定されております。これが本税制の最大のポイントです。(事業年度が1年に満たない場合は月数按分となります。)
基礎控除があるため、多くの法人では防衛特別法人税は発生しないものと推察されます。
中小企業の場合ですが、基準法人税額が基礎控除額の500万円を超えるためには、課税所得がおよそ2400万を超えている必要があるためです。

 

参考 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2025/01.htm

 

まとめ
防衛特別法人税は、既存の法人税制度を基盤としつつ、課税対象を「各事業年度の所得に係る法人税額」に限定した、シンプルな上乗せ税制といえます。
2026年4月以降開始事業年度からの適用に向けて、制度理解と準備を進めていくことが重要です。
私たち税理士法人Right Hand Associatesでは、新制度への対応も含め、お客様の税務サポートを全力で行ってまいります。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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