経営者保証に関するガイドラインについて

 
「経営者保証に関するガイドライン」をご存知でしょうか?
 
経営者保証には、経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営者が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となるといった課題も存在します。
 
 
そこで、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を共同事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」は、中小企業庁・金融庁等の協力を得て、経営者保証の課題解決に向けて、中小企業等(主たる債務者)や経営者等(保証人)、金融機関等(金融債権者)が果たすべき役割を具体化した「ガイドライン」を昨年12月に策定・公表し、今年2月から適用が開始されました。
 
 
適用から半年がたち、すでに政府系金融機関では、経営者保証を免除・猶予する制度融資が拡充・新設されていますが、まだ認知度が十分ではないと言われています。
 
そこで、今回は、このガイドラインの概要をご紹介したいと思います。
 
 
 
1.ガイドラインの適用対象となりうる保証契約
 
以下のすべての要件を充足する保証契約について適用されます。
 
 
(1)保証契約の主たる債務者が中小企業であること(個人事業主、中堅・大企業を含む。)
 
 
(2)保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること
(実質的な経営権を有している者、一定の事業承継予定者等を含む。)
 
 
(3)主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等について適時適切に開示していること
 
 
(4)主たる債務者及び保証人が反社会的勢力でなく、そのおそれもないこと
 
 
 
2.保証契約時の効果
 
以下のような一定の経営状況がある場合、経営者保証なしの融資を受けられる可能性が高まります。
 
 
(1)法人と経営者との関係の明確な区分・分離
 
法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離することが求められます。
 
たとえば、以下のような対応が考えられます。
 
・本社・工場・営業車等の事業用資産を法人所有とする
・事業上の必要性が認められない法人から経営者への貸し付けは行わない
・個人として消費した費用(飲食代等)について法人の経費処理としない
 
 
(2)財産基盤の強化
 
経営者個人の資産を債権保全の手段として確保しなくても、法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断しうる財務状況が期待されます。
 
たとえば、以下のような状況が考えられます。
 
・業績が堅調で十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であること
・業績はやや不安定ではあるものの、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能と判断しうること
・内部留保は潤沢とはいえないものの、好業績が続いており、今後も借入を順調に返済しうるだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高いこと
 
 
(3)財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
 
具体的には、債権者の求めに応じて、以下のような対応が求められます。
 
・貸借対照表、損益計算書の提出のみでなく、各勘定明細の提出
・年に1回の本決算の報告のみでなく、試算表・資金繰り表等の定期的な報告
 
また、開示情報の信頼性の向上の観点から、外部専門家(税理士・公認会計士等)による情報の検証を行い、その検証結果と合わせた開示がなされることが望ましいと考えられます。
 
 
 
3.保証債務の整理時の効果
 
これまで、保証人が自己破産した場合、原則として自由財産(破産法等により破産財団に属さないとされる財産。現金99万円等。)以外は保証債務の弁済に充当され、生活基盤の大半を失うこととなっていました。また、官報に公示され、信用情報登録機関に登録されると、再度の借り入れが制限を受けるなど、再チャレンジが困難になっていました。
 
経営者が早期事業再生を決断し、本ガイドラインに基づき保証債務の整理を申し出ると、保証債務の履行請求が限定的となる可能性が高まります。また、債権者は、このガイドラインによる債務整理を行った保証人について、債務整理に関連する情報を、信用情報登録機関に報告、登録しないこととされています。
 
 
(1)主たる債務の整理手続
 
法的債務整理手続(民事再生、会社更生、破産、特別清算)または準則型私的整理手続(中小企業再生支援協議会など中立公正な第三者が関与する私的整理手続等)によることが求められます。
 
 
(2)保証債務の整理手続
 
主たる債務との一体整理、もしくは、保証債務のみ整理のいずれかを選択できます。
 
 
(3)保証人の残存資産
 
債権者は、ガイドラインに基づく債務整理により破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあると判断した場合、自由財産の範囲を超えて、保証人の手元に残す残存資産を検討します。
 
残存資産の対象の具体例は以下のとおりです。
 
・現預金(自由財産+一定期間の生計費:年齢等に応じて100万円~360万円)
・華美でない自宅等(自宅兼店舗の場合の自宅等)
・主たる債務者の事業継続に最低限必要な資産等(本社・工場等)
 
 
(4)保証債務の免除
 
債務の弁済計画に経済的合理性が認められ、かつ、保証人がすべての債権者に対して保証人の資力に関する情報を誠実に開示する等の一定の要件を満たした場合、債権者は、履行後に残存する保証債務の免除要請について誠実に対応します。
 
 
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経営者保証に依存しない資金調達は、中小企業の活力を引き出す可能性がある一方、金融機関にとっては倒産の際の保証がなくなるため、慎重にならざるを得ない側面があります。
 
このため、すべての中小企業が保証解除できるわけではなく、経営の安定性・透明性の確保と、弁済に対する誠実性が求めらます。
 
 
 
 
 
<<私たちの事務所について>>
 
 
こんにちは。税理士法人Right Hand Associatesの小松です。
 
弊事務所の所長である原尚美は、「経営革新等支援機関」に認定されています。
 
経営革新等支援機関とは、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験を有するもので、中小企業に対して、経営分析や事業計画策定等、専門性の高い支援事業を行うことができるものとして、国に認定された機関です。
 
税務顧問サービス、事業計画書の策定はもとより、本日のトピックである「経営者保証に関するガイドライン」の適用が可能となるような社内管理体制の整備・運用のサポートや開示情報の検証においてもみなさまのお力になることができます。
 
ご相談があればぜひお寄せいただきたいと思います。
 
 
 
 
 
<<編集後記(今月のスタッフ日記)>>
 
 
最近、電子書籍にはまっています。
 
電子書籍の(私にとっての)メリットは、なんといっても、たとえ何百ページの本であろうと何十冊の本であろうと、外出時に持ち歩いたり保管したりする際の大きさ・重さが端末のサイズに限定されることです。
 
デメリットは、すべての書籍が電子化されているわけではないこと、書き込みができないこと、購入前に中身を見てみることができない書籍もあり、「失敗した」と思っても紙の書籍のように古書店に売ることができないこと、などでしょうか。
 
並べてみるとデメリットの方が多いようですが、最近はどこに出かけるにも「本」を持ち歩けるようになり、読書の時間が格段に増えました。
 
仕事で書き込みなどが必要な書籍は紙の本、息抜きに読むのは電子書籍、と使い分けをしながら、これからも楽しみたいと思います。
 

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