ものづくり補助金|申請できる枠や類型について解説
「ものづくり補助金」は、革新的なサービスの開発や生産プロセス改善等に取り組む中小企業向けに、設備投資などの費用を支援する補助金のことです。
申請枠の新設・変更が行われることもあり、2024年執筆時点において次の申請枠が設けられています。
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
当記事では主にこれら申請枠について解説し、利用にあたってのポイントも紹介します。
ものづくり補助金の概要
「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、革新的な製品やサービスの開発にかかる費用や、生産プロセスを省力化して改善を図るための費用などを補助する制度です。
国の財源を基に実施されている事業であり、中小企業庁が担当しています。そこで利用が想定されているのも「中小企業および小規模事業者等」です。大企業などあらゆる企業が利用できるものではありませんが、割合でいうと中規模以下の企業がほとんどですので多くの企業が利用を検討できる補助金といえるでしょう。
申請枠は公募回ごとに変更の可能性がある
ものづくり補助金に関しては公募回ごとに申請枠や類型が変更されることがあります。この点には十分注意してください。
過去の情報を参考にしてしまうと必要な要件を満たせず、補助金を受け取れない可能性が高くなります。
2024年4月時点においては、2023年12月27日(第17次公募)から始まった①省力化(オーダーメイド)枠、そして2024年1月31日(第18次公募)から始まった②製品・サービス高付加価値化枠と③グローバル枠の3つの枠があります。
②の枠にはさらに「通常類型」と「成長分野進出類型」の2つの類型が用意されていますので、同補助金を活用するパターンとしては全部で4つがあります。
申請枠①省力化(オーダーメイド)枠
まずは一足早く始まった「省力化(オーダーメイド)枠」について説明します。
こちらは人手不足の解消を主目的としており、「生産プロセス等を省力化する取り組みを支援」するための枠です。
長く続いてきたデフレから抜け出すためには中小企業での賃上げや人手不足解消が重要と考えられており、政府も省人化・省力化投資への支援に注力する方向を示しています。これらを踏まえ、令和5年度補正予算にて省力化(オーダーメイド)枠が新たに設けられたのです。
この申請枠が利用できるシーンとしては次のような例が挙げられます。
例1)これまで技術者の手作業に頼っていた工程に画像判別技術やAI機能を搭載した組立ロボを導入。24時間稼働や自動化が実現され、組立工程の生産性は向上、技術者はより付加価値の高い作業に専念できるようになった。
例2)手作業で食品ラベルを貼り付けていたが、そこへ多関節ロボを導入。これまで深夜作業が発生することや不良品が出てしまうなどの課題を抱えていたが、ロボットの導入によってラベルの貼付から箱の排出まですべて自動化されて、作業工数の削減および作業のライン化が実現できた。
補助の金額や補助率は次の通りです。従業員数によって上限額が大きく変動します。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 750万円(1,000万円) |
中小企業:1/2 小規模・再生事業者:2/3 ※補助金額1,500万円を超える部分は1/3 |
6~20人 | 1,500万円(2,000万円) | |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | |
51~99人 | 5,000万円(6,500万円) | |
100人以上 | 8,000万円(1億円) |
※()内は、大幅賃上げを行い、特例が適用された場合の金額
申請枠②製品・サービス高付加価値化枠
次に「製品・サービス高付加価値化枠」について説明します。
こちらの枠は、これまで市場にはなかった新たな製品やサービスが生み出されることを期待して行われる補助で、「革新的な製品やサービスの開発」に取り組む企業が対象となります。単にシステムの導入や設備導入をしただけだと要件を満たさず、「顧客へ新たな価値を提供するため、自社の技術力を活かして品質や機能性を高めるためにした取り組み」が必要です。
※同業種の他社がすでにしている開発であって、相当程度普及しているものに関しては支援対象外。
この申請枠には2つの類型がありますのでそれぞれ以下で紹介します。
通常類型
「通常類型」は、取り組む分野を限定せず、革新的製品・サービスの開発を広く支援するための類型です。
“3~5年の間(事業計画期間内)に、新製品等による売上高の合計額が、全体の売上高の10%以上になる”ことが示せる事業計画の策定が必須です。
また、取り組みに際して金融機関からの資金調達をする場合は、当該金融機関から事業計画の確認も受けなくてはなりません。
※これらの要件は後述の「成長分野進出類型」でも満たす必要がある。
補助の上限や補助率は次の通りです。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 100万円~750万円(850万円) | 中小企業:1/2 小規模・再生事業者:2/3 |
6~20人 | 100万円~1,000万円(1,250万円) | |
21人以上 | 100万円~1,250万円(2,250万円) |
※()内は、大幅賃上げを行い、特例が適用された場合の金額
成長分野進出類型
「成長分野進出類型」は、これからの成長が見込まれるDX(デジタル活用による変革)・GX(エネルギー転換を応用した変革)の分野に限定した類型です。
要件が通常類型より厳しくなりますが、その分補助の上限額や補助率が次の通りに引き上げられています。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 100万円~1,000万円(1,100万円) | 2/3 |
6~20人 | 100万円~1,500万円(1,750万円) | |
21人以上 | 100万円~2,500万円(3,500万円) |
※()内は、大幅賃上げを行い、特例が適用された場合の金額
申請枠③グローバル枠
続いて「グローバル枠」について説明します。
こちらは海外事業※を実施する事業を対象に、国内の生産性を向上させる取り組みに必要な投資費用を支援する申請枠です。
※海外事業は次の4つの取り組みを指す。
1.海外への直接投資に関わる事業
2.海外市場開拓に関わる事業
3.インバウンド対応に関わる事業
4.海外企業と共同でする事業
この申請枠によって、海外向けの新たな商品・サービスを開発すること、新たな販路開拓、海外向けのブランディングなどが支援されます。
要件としては「実現可能性調査の実施」と「海外事業に関する専門家・専門人材の協力」が設けられています。
市場調査などを経て、計画通りに実現できる可能性が高いことを示せないといけません。
補助上限額や補助率は次の通りです。
従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 3,000万円(3,100万円) | 中小企業:1/2
小規模・再生事業者:2/3 |
6~20人 | 3,000万円(3,250万円) | |
21人以上 | 3,000万円(4,000万円) |
押さえておきたいポイント
3つの申請枠と2つの類型があり、それぞれに満たすべき要件は異なります。
ただ、すべてに共通する要件がありますので、まずはその基本要件について押さえておきましょう。
《 ものづくり補助金の基本要件 》
次の目標を達成するための事業計画(期間は3~5年)を策定すること。
-
- 「付加価値額」を増加させる
- 付加価値額とは、営業利益・人件費・減価償却費を合計した値
- 年平均成長率(CAGR)3%以上の増加
- 「付加価値額」を増加させる
- 「給与支給総額」を増加させる
- 給与支給総額とは、非常勤も含むすべての従業員と役員に支払った給与等を合計した値
- 年平均成長率(CAGR)1.5%以上の増加
- 「事業場内最低賃金」の水準を高める
- 事業場内最低賃金とは、事業場の中でもっとも低い賃金のこと
- 地域別最低賃金+30円以上にする
この要件を満たしたうえで、各申請枠・類型ごとの追加要件をクリアしないといけません。
また、審査でチェックされる項目として、ものづくり補助金事務局が次の項目を掲げています。申請時は留意しておきましょう。
「技術面」での審査項目 | ・取組内容の革新性
・課題や目標の明確さ ・課題の解決方法の優位性 ・技術的能力 ・開発内容の妥当性 ・労働生産性の向上 |
---|---|
「事業化面」での審査項目 | ・事業実施体制
・市場ニーズの有無 ・事業化までのスケジュールの妥当性 ・補助事業としての費用対効果 |
「政策面」での審査項目 | ・地域経済への波及効果
・ニッチトップとなる潜在性 ・事業連係性 ・イノベーション性 ・事業環境の変化に対応する投資内容 |
加点項目 | ・経営革新計画の承認の取得
・事業継続力強化計画の認定の取得 ・創業から間もないこと など |
投稿日:2024/4/15
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