相続税申告は自分でしても問題ない?税理士に依頼すべき?判断基準を解説

相続税の申告は税理士に頼んで対処するのが一般的ではありますが、税理士の活用が法律で義務付けられてはいません。

状況によっては自分で行うことも可能です。

この記事では、相続人自身が申告対応をする場合のメリット・デメリットを解説し、税理士に依頼すべきかどうかをどのように判断すればいいのか、その基準についても紹介していきます。

相続税の申告に税理士は必須ではない

相続税の申告は税理士に依頼することが一般的ですが、法律によって必須と定められているわけではありません。

 

実際、財産構成が単純で評価方法が明確な場合には、ご自身でも十分に対応可能です。

申告の基本的な流れ

相続税の申告は、被相続人の死亡を知りご自身が相続人であることを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。

それまでにしないといけない主な作業は以下に掲げるとおりです。

 

  1. 相続財産の把握
    • 預貯金や有価証券の残高確認
    • 不動産の評価額算定
    • 債務や葬儀費用の集計
  2. 必要書類の収集
    • 戸籍謄本や除籍謄本など(被相続人および相続人の分)
    • 遺産分割協議書または遺言書の写し(誰が何を取得したのか証明できる資料)
    • 各種評価証明書
    • 債務や費用の証明書類
  3. 申告書の作成と提出
    • 財産の評価額の計算
    • 課税価格の算出
    • 各種控除(配偶者控除、未成年者控除、障害者控除など)の適用
    • 納付税額の計算
    • 税務署への提出

ここに示したのはごく基本的な作業であり、実際にはより細かな作業が多く発生します。

法律の知識が必要となることも多いですし、一般の方がミスなく進めていくのは難しいかもしれません。

相続税を自分で申告するメリット

相続税を自分で申告する最大のメリットは「費用の節約」にありますが、それ以外にもいくつかメリットがあります。

 

 

各メリット 詳細
申告費用の節約 税理士に依頼する場合、一般的に相続財産の総額や申告の複雑さに応じて費用が定まる(相場は遺産総額の0.5%~1.5%程度)。

30万円程度で済むこともあれば、大きな資産があると100万円以上の費用が発生することもある。

自ら対応すれば必要書類の取得費用のみで済むため大きなコスト削減になる。

相続税の仕組みや財産のことが把握できる 申告作業を通じて財産評価の方法や控除の仕組みなど相続税の基本を理解できる。将来の相続対策や資産管理にも活きる知識が得られる。

また、その過程で相続財産の詳細や評価額まで自分で確認することになり、相続後の資産管理もスムーズになる。

自分のペースで作業できる 税理士に依頼する場合は予定を合わせる必要があるが、自分で対処するなら都合の良いタイミングで作業を進められる。

 

なお、これらのメリットを活かすには十分な時間と労力を確保する必要があります。

相続税を自分で申告するデメリット

メリットのみならず、以下にまとめたデメリットについても理解のうえ、自分で対応するかどうかを検討してください。

 

 

各デメリット

詳細

申告ミスが起こりやすい

財産評価や控除の計算は簡単ではなく、意図的ではなくても延滞税や加算税が課されてしまう。

特に土地の評価方法は複雑で、専門知識がないと正確な評価が難しい。

時間と手間がかかる

財産の調査や評価、必要書類の収集、申告書の作成など、すべての作業を自分で行う必要がある。初めての相続税申告だと想像以上に時間がかかることを覚悟すべきで、仕事や家事に支障をきたすおそれもある。

税務調査への対応が難しい

申告後、不審な点が見つかると税務調査が入ることがある。調査官から資料の提出を求められたり、細かく質問を受けたりすることもあり、高度な知識・ノウハウを持っていないと的確な対処は難しい。

相続税の負担が増す危険性

各種の特例制度や節税対策が使えるはずが、知識不足により活用できる制度を見落としてしまう可能性がある。結果的に納税額が必要以上に高くなってしまうリスクがある。

 

このように、プロが対応しないことによって相応のリスクと負担を負うこととなってしまうでしょう。

税理士活用の判断基準

相続税の申告で税理士に依頼するかどうかの判断は、「相続財産の複雑さ」と「申告者の時間的余裕」に着目して決めると良いでしょう。

具体的には、不動産の数や種類、事業用資産の有無、相続人の人数などを総合的に見ながら検討します。

自分で申告するリスクが小さいケースについて

以下のような条件が揃っている場合は、相続人自身が申告に対応しても大きな問題が起こるリスクが小さいです。

 

  • 相続財産が預貯金や上場株式中心
  • 不動産が自宅1件程度で、賃貸等での活用をしていない
  • 相続人が少数で、遺産分割に関する争いがない
  • 申告期限まで十分な時間的余裕がある
  • 相続税の仕組みをよく理解している
  • 相続財産の総額が明らかに基礎控除額(=3,000万円+600万円×法定相続人の数)を下回る

税理士に依頼した方がいいケースについて

以下に掲げるケースに該当するなら、専門家への依頼を強く推奨します。

 

  • 複数の不動産や事業用資産が含まれている
  • 国外に財産がある場合
  • 相続財産に未上場株式が含まれている
  • 被相続人が経営者で事業承継問題も絡む
  • 相続人が多数で、遺産分割協議が複雑
  • 借入金や連帯保証債務がある
  • 小規模宅地等の特例など、特例の適用を検討している
  • 相続税の申告期限まで時間的余裕が少ない

 

特に、事業用資産や未上場株式の評価は専門的な知識が必要で、誤った評価は多額の追徴課税につながる可能性があります。

また、特例の適用漏れは取り返しのつかない損失となる可能性もあるため、このようなケースでは税理士への依頼を検討しましょう。

 

「税理士費用は高額だから」と依頼を躊躇するかもしれませんが、適切な評価や特例の活用により節税効果が高まることもあります。

そのため単純に費用を比較するのではなくさまざまな要素を総合的に考慮して決めることが重要です。

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