2023年度税制改正大綱 ~新NISAは貯金派の心を動かせるか~

例年より少し遅いタイミングとなりましたが、「税制改正大綱」です。

税制改正大綱は、翌年度以降の税制改正の方針を与党がまとめた文書で、毎年12月に発表されます。国会審議前のものですので変更になることもありますが、今後の税制の流れを知ることができます。

 

今年度は、「成長と分配の好循環の実現」、「公正で中立的な税制の見直し」といった考え方のもとに、NISA制度の拡充と恒久化、スタートアップ企業への再投資に係る優遇措置、生前贈与に係る相続・贈与課税の見直しなど、大きな改正が盛り込まれました。

 

そのうち、今回はNISA制度の拡充と恒久化について取り上げたいと思います。「貯蓄から投資へ」の流れを推進するため、現行の一般NISAとつみたてNISAを統合させるかたちで、新NISAが創設されます。

 

そもそも現行の一般NISA、つみたてNISAとはどのようなものだったでしょうか。
投資で得た利益には、通常20.315%の税金がかかります。NISA制度は、毎年一定額までの投資で得られる利益は一定期間非課税になるというもので、成年が利用できる一般NISAとつみたてNISA、未成年が利用できるジュニアNISAの3種類があります。大人向けの前者2つの違いは次の通りで、同時併用はできません。

 

・一般NISAは、株式・投資信託等を、2023年まで年間120万円を上限に購入でき、購入年から数えて5年間は運用益が非課税になる。
・つみたてNISAは、金融庁が定める基準を満たす長期積立・分散投資に適した投資信託を、2042年まで年間40万円を上限に購入でき、購入年から数えて20年間は運用益が非課税になる。

 

NISA制度の最大のメリットは運用益が非課税になるということですが、その非課税期間に期限があるということがデメリットでもありました。
非課税期間が20年と長いつみたてNISAでも、もし成人してすぐに老後の資金のために始めたとしたら、40歳前後で非課税期間終了になるものが出てきてしまいます。
非課税期間が終わったとき、もし景気が悪くて資産が目減りしてしまっていたら…そう考えると利用するのを躊躇してしまうという方も多かったのではないでしょうか。制度自体に期限があるために、始める年によって、800万円まで(年間40万円購入×20年)、600万円まで(年間40万円購入×15年)と、非課税枠がだんだん減ってしまうのも不公平感がありました。

 

しかし今年度の税制改正大綱に、ついにNISA制度の恒久化が盛り込まれました。
年間投資上限額と一生涯の非課税限度額も拡充され、老後の資金は2,000万円必要と言われる時代に備えるのにより現実的な金額設定となりました。
新NISA制度の創設です。

 

〇新NISA制度
・非課税保有期間を無期限化、投資可能期間の期限もなくなる。
・現行のつみたてNISAと同様の長期積立・分散投資に適した一定の投資信託に対象を限定した「つみたて投資枠」を基本として、上場株式への投資が可能な「成長投資枠」を併用できる2階建ての制度になる(現行のつみたてNISAが一般NISAを吸収するイメージでしょうか)。
・年間投資上限額は、「つみたて投資枠」を120万円まで、「成長投資枠」を240万円まで拡充。併用すると、合計で360万円まで年間投資が可能になる。
・一生涯の非課税限度額は、1,800万円(「成長投資枠」は、うち1,200万円)に設定される。

 

2024年1月開始となります。
現行の一般及びつみたてNISAを利用している場合はどうなるのでしょうか。
2023年末までに現行制度で投資した分は、新しい制度の外枠で、現行制度における非課税措置が適用され(つみたてNISAなら購入年から数えて20年間非課税)、2024年以降は新制度で投資を行うことになります。

 

今回の制度改正が成立すれば、NISA制度の大きなデメリットが解消されることになり、より多くの人が利用しやすい制度となります。とはいえ、投資であるからにはリスクがあることには変わりなく、利息は無いに等しくても堅実にお金を貯められる貯蓄がやはり安心という貯金派の方もいらっしゃると思います(私も半分そうです)。そういった国民の心を、新NISA制度はどれだけ動かすことができるのでしょうか…注目です。

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