会社設立時の役員構成はどうやって決める? 役員の種類や機関設計のルールについて
会社経営は「役員」が行います。そのため会社設立時から1人以上は役員が必要となるのですが、複数人の役員を置くことも可能です。さらに役員となる機関にも種類があり、立ち上げ前には機関設計についても考えておく必要があります。
そこで当記事では会社設立を検討している方に向けて役員のことを説明し、設立時に知っておきたい役員構成の決め方、機関設計についても紹介していきます。
会社の役員とは
役員は会社の方針を決める、経営を担う人物のことです。そのため「経営者」とも呼ばれます。
株式会社の場合は①取締役、②監査役、③会計参与の3つにわけることができますので、会社設立を考えている方は、まずはこの3つの役員について把握しておきましょう。
取締役
取締役の特徴を次にまとめます。
- 会社の経営が仕事
- 株式会社に1人以上は必ず置かないといけない
- 取締役会を設置するときは3人以上の取締役が必要
- 任期は原則2年
※非公開会社は定款の定めにより10年まで延長可能 - 法人や特定の罪を犯した者はなれないが、法定代理人の同意があれば未成年者でも取締役になれる
なお、設立時取締役として就任した段階では未だ株式会社が成立していないため、会社経営ではなく出資などについての調査を行うのが主な仕事です。現物出資財産が定款の記載通り適切であるか、十分に出資がなされているか、法令や定款に反した設立手続となっていないか、これらをチェックします。
監査役
次に監査役の特徴を次にまとめます。
- 役員の監視が仕事
- 設置の有無は任意であるが、取締役会が設置されるときは監査役が必要
※会計参与が置かれていれば必須ではない - 任期は原則4年
※非公開会社は定款の定めにより10年まで延長可能 - 他の役員や使用人との兼任はできない
監査役を置くことで、自社がコンプライアンスを徹底していること、株主に不利益がないことをアピールしやすくなります。
会計参与
次に会計参与の特徴を次にまとめます。
- 計算書類等の作成を担う
- 任期は原則2年
※非公開会社は定款の定めにより10年まで延長可能 - 会計参与になれるのは公認会計士、税理士、監査法人などの専門家に限られる
会計参与は会社帳簿や計算書類に関わる各種資料をチェックすること、会社の業務や財産について調査すること、計算についての株主総会での発言などを行うことができます。
株式会社には「会計監査」という機関も存在しますが、こちらは会社外部の第三者によるチェック機能を働かせるために設けられるものです。これに対して会計参与は、会社内部で取締役とともに決算書等を作成する役割を担うという違いがあります。
その他の肩書について
「会長」や「社長」、「専務」といった肩書が付される役職も存在しますが、こちらは会社法上定義された役員ではありません。あくまで各社が内部的に定めた肩書であり、この名称から法律上の権限が定まるわけではありません。
会社設立時の役員構成の決め方
会社設立時の役員構成は、起業手続を担う「発起人」が決められます。基本的に好きな構成にすることができますが、適切な企業経営を目指す上ではいくつかのポイントを押さえておくことが大事です。
会社の規模とビジョン
取締役1人でも株式会社は設立できますが、大規模な事業を立ち上げるときは複数人の役員を備えることになるでしょう。仕事量が多くなると予想されますので、業務分担をするために人員を用意しておくのです。営業や技術、人事、ファイナンスなど各々に精通した分野があると業務分担もしやすくなります。
また、急成長の見込みがある、急成長を目指すときにも1人ではなく複数の役員が必要になると考えられます。
他方で、小規模でスタートして地道に事業を伸ばしていく場合には1人や2人など、少ない役員数で立ち上げても問題ないでしょう。
意思決定の柔軟性
多数の役員がいるとその分知識やノウハウを共有することができ、判断の精度が高くなることが期待できます。
しかしながら、同等の権限を持つ人物が多いほどなかなか1つの答えを導き出すまでに時間がかかってしまい、迅速な意思決定ができなくなってしまいます。
そのためスピード感を重視する場合は役員の人数を抑えることも意識することが大事です。
監査役や会計参与の有無
取締役は必ず置くことになりますが、監査役や会計参与は常に置かないといけない役員ではありません。
そこでこれらの役員を置くかどうかは、「内部統制の強さ」「経営の透明性」「事業の複雑性」などから判断すると良いでしょう。
- 内部統制の強さ
監査役や会計参与を設置することで内部統制の機能を強めることができる。ただし会計参与に期待されるのは計算書類に関わる正確性の面のみであり、この点では特に監査役の有無が重要といえる。 - 経営の透明性
株主や取引先などのステークホルダーとの関係を良好に保つ上では経営の透明性が重要。監査役を設けることでこの点をアピールでき、対外的な信用にもつながる。 - 事業の複雑性
事業内容が複雑で多岐にわたる取引、複数の事業部門を持つときは、専門的な知見を持つ監査役や会計参与の存在が有益。決算書等の作成にかかる負担が大きくなると予想されるときは会計参与の設置が重要となる。
役員報酬にかかるコスト
役員を多く設けることで役員報酬も多く発生してしまい、会社にかかるコストの負担が増大してしまいます。
そのため、通常は立ち上げ当初から多くの役員を設けることは避け、事業を軌道に乗ってきてから事業や組織規模を大きくし、それに伴って役員の数も増やすというのが基本的な流れです。
設立時によくある機関設計
役員にあたる取締役や監査役、会計参与以外にも、株式会社が設置できる機関はいくつかあります。
さまざまなパターンで機関設計をすることが可能ですが、一定の場合には設置が義務とされる機関もありますので、まずは「公開会社にするかどうか」を考える必要があります。
公開会社とは株式の譲渡に制限をかけない会社のことで、逆に株式の譲渡が自由にできないよう定款に定めを置く会社は「非公開会社」と呼ばれます。会社設立時など、多くの中小企業は非公開会社です。そうするとこの場合は取締役会の設置が義務ではなくなります。
取締役会を設置するなら取締役が3人以上必要ですし、監査役または会計参与も必置となります。そこで必然的に役員の数も大きく増えることとなります。
これに対して取締役会を設置しない場合であれば、「取締役1人だけ」という役員構成で会社設立をすることも可能です。実際のところ取締役1人だけの会社も珍しくありません。
潤沢な資金があり規模の大きな組織を構える必要があるといった状況でないなら、設立時は取締役1人あるいは「取締役+α」程度の役員構成で十分でしょう。役員の人数や機関の設計について不安があるという場合は会社設立に強い専門家に一度相談してみましょう。事業内容や今後のビジョン、自己資金などを総合的に評価してもらうことで、より良い案を提示してもらえるかもしれません。
投稿日:2023/9/7
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